南会津のちいさな北欧を訪ねる旅
スヴェーデン社会研究所の懇親旅行に参加して
東武線は、関東平野を縦断し会津に向かいます。車窓の風景は、青い空の下、紅葉の真っ盛りです。土曜の車内は、行楽客で満員です。楽しげに談笑する声で車内は賑やかです。私達一行も須永夫妻を中心に会話が弾みます。
会津が近くなり空は一転して暗くなります。
「雪…」会津の旅は、初雪の驚きから始まりました。
会津田島駅で旅の一行が揃いました。駅前の蕎麦屋での簡単な自己紹介の後、ゲストハウスのオーナー兼シェフの大久保さんの車に便乗し宿泊先の南会津町に向かいます。峠越えの道は登につれ雪が激しく、周りは白一色の世界になります。一同、今年初めての本格的な雪に興奮し車内は一層賑やかになります。
ゲストハウス「ダーラナ」は、茅葺屋根と白壁に青い窓枠が印象的な建物です。玄関先の朱色のダーラへストが、私達を迎えます。築二百年の会津地方独特の曲屋は、どっしりとした存在感で風景に溶け込んでいます。
建物内部は、昔からの構造をそのまま生かしています。大きな梁や柱が、囲炉裏からの煙でいぶされ黒光りして印象的です。廊下の表面も艶々と光っています。障子の桟に白い和紙、白い壁には北欧独特のペイントが描かれています。日本と北欧の様式が、違和感なく調和している空間は、オーナーの拘りとセンスの良さを感じさせます。
先ずは、食堂での一服のコーヒーです。飲みながら周りを見るとテーブルの傍には、北欧の洋食器が、無造作に沢山おかれています。今では求めても手に入れるのが難しいものが沢山あります。長く北欧で料理の腕を振るわれた大久保シェフならではのものばかりです。隣接する厨房でシェフとスタッフのよしえさん、曽根さんのディナーの準備が始まりました。
一同は、其々指定された部屋へ向かいます。
私達夫婦は、ツインの洋室です。壁の照明が淡く部屋を照らします。遠い昔、子供時代に感じた不思議な居心地の良い空間です。
ディナーの時間となりました。囲炉裏の燃える部屋の奥、昔の土蔵が併設され、食堂ニューアルされています。土蔵特有の重厚な扉の奥にその空間があります。正面には立派な燭台に灯りがともされ、脇には和風の灯りです。和と洋の素敵な調和の世界です。
ディナーは、前菜のアボガドのムースから始まり本格的な料理が続きます。シェフの心のこもった料理です。それは、スヴェーデンが結びつけた須永夫妻をはじめとする長年の友情を感じる料理です。
食べるほどに飲むほどに一同の会話が盛り上がります。談笑の輪は、囲炉裏端に席を移し更に続きます。一同の話題は尽きません。スエーデンの酒アクアビットが振舞われます。スコールの掛け声、歌もとびだします。スヴェーデン人の参加者エリックに母国の言葉の歌を歌うようにお願いします。「帆掛け船」スヴェーデンで有名な民謡が南会津の曲屋に響きます。風と帆掛け船「誰が涙なくして、友と離別する事が出来るでしょうか」北欧の素朴で簡素な温かい心情が伝わります。このようにして夜が更けてゆきました。
翌日は、雪の会津で、からむし工芸博物館や大内宿を案内いただき、わざわざ新幹線の那須塩原駅までお送りいただきました。
今回の旅に参加して一番の収穫は、大久保シェフやダーラナの関係者の心のこもった対応に接し、須永さんを始めとするスヴェーデン関係者との深い交流を知りました。そのような素敵な方々と知り合えた事です。
心をこめて「ありがとでやした また会ぁべ」